モビリティの軽量化は、素材選定と成形技術の組み合わせ方で、性能とコストを両立しながら大きな成果につなげられます。重量を減らしたいものの、どの素材や工法を選べば失敗しないのか迷われている方もおられるのではないでしょうか。
軽量化の成否を分けるのは、素材を闇雲に変えることではなく、目的から逆算した設計判断です。モビリティの軽量化を実現した以下のような事例が報告されています。
- 事例①鉄からアルミへ置き換え車体パネルを約50%軽量化
- 事例②マグネシウム採用で構造部品の重量を半減
- 事例③マルチマテリアル化で剛性を保ちながら軽量化
この記事では、軽量化を叶えた事例から成功の手順、成功させるステップ、重要視される背景、素材の選び方について解説します。また、よくある質問も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。


モビリティの軽量化を実現した3つの事例
軽量化の成果は、机上の理論よりも実際の置き換え事例を見るほうがイメージしやすいものです。ここでは、素材や工法の工夫によって重量を大きく減らした代表的なケースを紹介します。
事例①鉄からアルミへ置き換え車体パネルを約50%軽量化
身近な軽量化は、鋼板からアルミ板へ置き換える方法です。ドアやボンネットといった自動車パネルを鋼板からアルミニウムに換えると、約50%もの軽量化が可能だと軽金属学会の専門家が解説しています。
実際、自動車1台あたりのアルミ使用量は1980年の約40kgから2021年には約190kgへと大きく増えました。この数字は、軽量化の主役がアルミへ移ってきた事実を物語っています。アルミは加工性と耐食性のバランスに優れ、鋳造から板材まで幅広く使える点が現場で重宝される理由です。
参考:専門家に聞く自動車のアルミニウム化~技術開発(軽金属学会事務局長 櫻井健夫氏)【前編】|CEMEDINE Style
事例②マグネシウム採用で構造部品の重量を半減
より踏み込んだ軽量化を狙うなら、マグネシウムが有力な選択肢になります。住友電工は、マグネシウム合金を使ったシートやインパネのフレームの試作品で、強度を確保しつつ鉄製部品から重量を半減させたと公表しています。
マグネシウムは比重が約1.8と実用金属で最も軽く、振動を吸収する性質にも優れています。当社が手がけるマグネシウムチクソ成形は、溶融温度が低く薄肉でも精密に成形できるため、小型で複雑な構造部品の軽量化と相性がよい工法です。
参考:車両軽量化に大きく貢献する実用マグネシウム合金の開発〜自動車や鉄道・航空機など幅広い製品分野に適用可能〜|住友電工
なお、チクソモールディングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:チクソモールディングとは?マグネシウム成形技術のメリット・デメリットをご紹介!
事例③マルチマテリアル化で剛性を保ちながら軽量化
単一素材にこだわらず、複数の素材を適材適所で組み合わせる手法も広がっています。鋼材・アルミ・樹脂などを組み合わせるマルチマテリアル化は、コストを抑えながら重量削減と剛性確保を両立できると一般社団法人日本自動車会議所が紹介しています。
たとえば、CFRP(炭素繊維強化樹脂)を使った日産リーフの派生車種では、約600kgもの軽量化が実現したと報告されています。素材ごとの長所を引き出す設計が、これからの軽量化の主流になります。
参考:軽量化の有力技術、進化するマルチマテリアル|一般社団法人日本自動車会議所
参考:車体軽量化に向けた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)部品の量産化技術を開発|日産自動車ニュースルーム

モビリティの軽量化を成功させる3つのステップ
事例を踏まえても、いざ自社製品で進めようとすると順序に迷うものです。失敗を避けるため、当社が実際の開発で踏んでいる流れを解説します。各ステップを丁寧に進めることで、過剰な強度や無駄なコストを避けた合理的な軽量化につながります。
◆軽量化を成功させる3つのステップの概要図

それぞれについて詳しくみていきましょう。
ステップ①現状を分析し軽量化の目標を定める
最初に行うべきは、対象部品の重量と役割を正確に把握することです。どの部品にどれだけの荷重がかかっているのか、現状の重さは何グラムなのかを数値で洗い出して、何グラム減らせば効果が出るのかという目標値を明確に設定しましょう。
目標が曖昧なまま素材だけを変えると、強度不足を招いたり、逆に過剰な性能でコストが膨らんだりしかねません。到達点を先に決めることが、遠回りを避ける近道になります。現状把握と目標設定という土台を固めてこそ、次の素材選定が活きてきます。
ステップ②目的に合った素材を選定する
目標が定まったら、その重量と要求性能に見合う素材を選びます。強度を最優先するなら鉄、軽さと加工性のバランスを取るならアルミ、極限の軽さを狙うならマグネシウムというように、特性から逆算する考え方が有効です。
選ぶ素材で重さは大きく変わります。鉄の比重7.8に対して、アルミは2.7、マグネシウムは1.8だと日本アルミニウム協会も示しています。しかし、軽い素材ほど加工やコストの難易度が上がる点には注意が必要です。長所と短所を天秤にかけ、部品ごとに最適な一手を見極めましょう。
参考:次世代のクルマ創りを支える環境金属アルミニウム|日本アルミニウム協会
なお、アルミとマグネシウムの比重の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:アルミとマグネシウムの比重の違い!軽量化を実現するポイント
ステップ③成形方法を決めて試作で検証する
素材が決まったら、その性能を最も引き出せる成形方法を選びましょう。同じマグネシウムでも、ダイカストとチクソ成形では寸法精度や薄肉化のしやすさが異なるため、部品の形状や用途に合わせた見極めが欠かせません。
また、方法を決めたら、必ず試作で実力を確かめましょう。机上の計算と現物の挙動には差が出やすく、強度や仕上がりは実際に作ってみて初めて判断できます。
試作と評価を繰り返して品質を固めることが、安定した量産への橋渡しになります。ここまで丁寧に積み上げてこそ、狙いどおりの軽量化が形になります。

モビリティの軽量化に適した素材の選び方
素材選びでは、それぞれの長所と短所を理解することが出発点になります。下の表で主な軽量化素材を比較しました。
◆主な軽量化素材の比較表

マグネシウムは魅力的な反面、腐食しやすく加工が難しいという弱点を抱えてきました。しかし近年は耐食性や成形性を高めた合金が開発され、自動車やモビリティ分野への適用が現実味を帯びています。
弱点を補う技術力こそが、軽量化の差を生む時代になりました。素材単体の性能だけでなく、それを扱う成形技術まで含めて見極めることが、最適な選定への近道になります。

モビリティの軽量化が重要視される3つの背景
なぜ、これほど軽量化が求められているのでしょうか。背景には、EVシフトや環境規制をはじめとする複数の要因が重なっています。ここでは代表的な背景を整理します。
背景①EVシフトによる車両重量の増加
EVは、航続距離を稼ぐために大容量のリチウムイオンバッテリーを積みます。このため、車体が重くなりがちで、同クラスのガソリン車と比べて平均300〜400kgも重くなる傾向があると指摘されています。
重量増のほとんどはバッテリーが占めています。重い車体は走行により多くの電力を消費するため、せっかくの電力を無駄づかいしてしまいます。
これにより、バッテリー以外の部分をいかに軽くするかが問われます。EVシフトが進むほど、車体の軽量化は性能を左右する重要なテーマになりました。
背景②世界的なCO2排出規制の強化
地球温暖化対策として、CO2排出量の削減が世界共通の課題になっています。各国が自動車に対する排出規制を年々強化しており、メーカーは対応を迫られています。
排出量を抑えるため、エンジンの燃費改善やパワートレインの電動化が進められてきました。しかし、軽量化された車は、同じ距離を走るのに必要なエネルギーが少なくて済みます。規制が厳しさを増すなか、軽量化は選択肢のひとつではなく、避けて通れない取り組みへと変わりました。
背景③航続距離と燃費への直結
軽量化が注目される最大の理由は、その効果が走行性能へ直接表れる点にあります。一般に10%の軽量化で約10%の燃費・電費改善が見込めると、高知工科大学の研究でも示されています。
EVであれば、バッテリーそのものに手を加えなくても、車体を軽くするだけで航続距離を伸ばせます。ガソリン車なら燃費の向上に直結します。このため、軽量化は、走行性能と環境性能を同時に底上げする一石二鳥の手段です。限られた重量をどこまで削れるかが、製品の競争力を大きく左右します。

アルミとマグネシウムによるモビリティ軽量化なら「株式会社藤岡エンジニアリング」

「株式会社藤岡エンジニアリング」は、アルミやマグネシウムの精密部品製造において、最適な素材選定と高度な成形技術の両立を実現します。創業70年を超える歴史で培った技術力をもとに、アルミダイカストやマグネシウムチクソ成形で豊富な実績を積み重ねてきました。
金型の設計から製品の仕上げまで一貫して対応できる体制が、当社の強みです。軽量化への挑戦や難形状の実現でお困りなら、ぜひ私たちにご相談ください。高品質なモノづくりを通じて、お客様の製品価値を最大化するソリューションをご提案します。⇒株式会社藤岡エンジニアリングへのお問い合わせはこちら

モビリティの軽量化でよくある3つの質問
モビリティの軽量化でよくある質問をご紹介します。それぞれ詳しくみていきましょう。
質問①アルミとマグネシウムはどう使い分ければよいですか?
判断の軸は、求める軽さとコスト、使用環境です。それぞれの特徴を整理すると、向いている部品が見えてきます。
アルミニウムが向いているケース
- 軽さとコスト、加工性をバランス良く両立させたい
- 耐食性が求められ、表面処理の手間を抑えたい
- パネルやケースなど、比較的大きな部品を量産したい
マグネシウムが向いているケース
- アルミ以上の軽さを徹底して追求したい
- 振動を抑えたい、衝撃を吸収させたい部品に使いたい
- 小型で複雑な形状の構造部品を精密に成形したい
マグネシウムは比重1.8とアルミの2.7より軽いですが、素材コストは高めです。高温下ではクリープ(変形)を起こしやすく、腐食対策の表面処理も欠かせません。このため、すべてを一方に寄せるのではなく、部品ごとに適材適所で組み合わせる発想が有効です。
質問②軽量化の効果はどのくらいの期間で実感できますか?
走行性能としての効果は、軽量化した部品を搭載した瞬間から表れます。車体が軽くなれば、加速の応答や航続距離、燃費の改善をすぐに体感できます。
一方で、開発に着手してから量産にこぎ着けるまでの期間は、部品の規模によって変わります。素材選定から金型製作、試作、評価までを踏むため、数か月単位の見通しを持つと安心です。早く確実に成果を出すには、上流の設計段階から相談することが近道になります。
質問③マグネシウムは腐食しやすいと聞きますが対策はできますか?
対策は十分に可能です。マグネシウムは確かに腐食しやすい性質を持ちますが、適切な表面処理を施すことで、実用上の問題を抑えられます。
近年は、アルミや亜鉛を添加して耐食性を高めたAZ91Dなどの合金が主流です。素材そのものの弱点が、合金設計によって大きく改善されています。さらに、異なる金属との接触で起こるガルバニック腐食も、設計段階の配慮で防げます。

最適な素材選びでモビリティの軽量化を実現しよう!
モビリティの軽量化は、事例に学び、正しい手順で進めることで着実に成果へ近づきます。軽量化はバッテリーや空気抵抗とともに、航続距離や燃費を左右する3要素の1つです。素材を一段と軽くするたびに、走行性能と環境性能の両方が前進します。モビリティの軽量化を成功させるには、以下のステップを意識しましょう。
- ステップ①現状を分析し軽量化の目標を定める
- ステップ②目的に合った素材を選定する
- ステップ③成形方法を決めて試作で検証する
まずは「どの部品を、何グラム軽くしたいのか」を書き出すところから始めてみてください。その一歩が、競争力のあるモビリティづくりへの確かな出発点になります。
なお、「藤岡エンジニアリング」では、軽くて丈夫なマグネシウムやアルミの精密部品製造から金型設計・製作まで一貫して対応し、お客様のニーズに最適なソリューションを提供しています。高品質な製品をお求めの場合は、ぜひ一度ご相談ください。⇒藤岡エンジニアリングへのお問い合わせはこちら



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