マグネシウムは、実用金属の中でもっとも軽く、自動車の軽量化を支える有望な素材です。比重は鉄の約4分の1、アルミの約3分の2で、強度を保ったまま部品を軽くできます。
「マグネシウムの自動車用途」を具体的に知りたい、自社部品に採用できるか見極めたいと考える方は多いのではないでしょうか。実は採用の成否は、素材選び以上に設計や工法の押さえどころで決まります。主に、以下の用途でマグネシウムは自動車で活用されています。
- 用途①ステアリングホイールの芯金
- 用途②シートフレーム
- 用途③インストルメントパネルビーム
- 用途④トランスミッションケース・オイルパン
- 用途⑤電装系の放熱・ヒートシンク部品
この記事では、富山大学との共同開発で実現した高熱伝導マグネシウムの事例、自動車におけるマグネシウムの用途事例、採用を成功させるポイント、注目される背景やメリット・デメリットまでを一気に解説します。また、よくある質問も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。


富山大学との共同開発で実現した高熱伝導マグネシウムの事例

引用:富山大学と共同特許出願を行った高熱伝導マグネシウムがプレスリリースされました。|藤岡エンジニアリング
「藤岡エンジニアリング」は、富山大学と高熱伝導マグネシウム合金を共同開発しました。放熱性能と成形のしやすさを両立したこの合金は、2026年2月に共同で特許を出願して、同年4月にプレスリリースしました。
EVのヘッドランプや電子機器のヒートシンク(発生した熱を外部へ逃がす金属部品)には、軽くて放熱性に優れた素材が求められます。比重がプラスチック並みに軽いマグネシウムは、本来この用途に適した素材です。
しかし、従来は高い熱伝導率と成形性の両立が大きな壁でした。熱伝導率を高めるMg-Al-Ca系合金はカルシウム量が増えると鋳造機に溶湯が固着しやすく、とくにチクソモールディングでの連続成形に難がありました。
私たちは富山大学とともに、このカルシウム量を最適化することで成形性の課題を解決しました。量産工法に適した形で高熱伝導と成形性を同時に満たした点が、この開発の核心です。
◆開発合金の主な特性
| 項目 | 内容 |
| 熱伝導率(成形まま) | 従来の汎用合金(AZ91Dなど)を上回る |
| 熱伝導率(後処理後) | 最大130W/m・Kまで向上 |
| 耐食性 | 塩水噴霧試験で最も優れた評価 |
| 適用工法 | ダイカスト・チクソモールディング |
成形したままでも、AZ91Dなどの汎用合金より高い熱伝導率を示しており、後処理を加えると130W/m・Kまで高められます。塩水噴霧試験でも最良の評価を得ており、自動車部品で課題になりやすい耐食性も両立しています。
この合金は、EVヘッドランプやドローンの電池カバーなど、放熱と軽量化を同時に求められる用途での量産適用が期待されます。研究の詳細は、富山大学との共同研究資料でご確認いただけます。⇒研究の詳細はこちら

マグネシウムが活躍する自動車の用途5選
自動車におけるマグネシウムの用途は、芯材のような小さな部品から、近年は大型の構造部品へと広がっています。私たちが日々の精密部品づくりで実感するのは、適所を見極めれば鉄やアルミを大きく上回る軽量化が可能だという点です。代表的な用途を紹介します。
◆マグネシウムの自動車用途の概要図

それぞれについて詳しくみていきましょう。
用途①ステアリングホイールの芯金
マグネシウムが早くから自動車で実用化された用途のひとつが、ステアリングホイールの芯金です。手で握る部分の内部骨格に使われ、軽さと振動吸収性の両立が求められます。
マグネシウムは鉄より振動吸収性に優れるため、ハンドルから伝わる細かな振動を抑え、運転時の疲労低減にも寄与します。鋳造で複雑な形状を一体成形できる点も、採用が進んだ理由のひとつです。
用途②シートフレーム
シートフレームは、強度を保ちながら大幅な軽量化が狙える部位です。乗員を支える骨格のため、比強度(重さあたりの強度)に優れるマグネシウムが適しています。
座席は1台に複数搭載されるため、1脚あたりの軽量化が車両全体では大きな差になります。EV化で増えがちな車両重量を抑える観点からも、注目度が高まっています。
用途③インストルメントパネルビーム
運転席前のインストルメントパネルを支える横方向の梁にも、マグネシウムの薄肉・一体成形が活きます。複数の部品を1つにまとめられ、部品点数の削減につながります。
ダイカストで複雑な形状を一度に成形できるため、組立工数とコストの両面でメリットが生まれます。剛性の確保と軽量化を同時に満たせる、代表的な構造部品です。
用途④トランスミッションケース・オイルパン
パワートレイン周りでは、トランスミッションケースやオイルパンへの採用が進んできました。これらは大型部品のため、軽量化の効果がそのまま燃費や走行性能に響きます。
しかし、エンジン周辺は高温になるため、従来は耐熱性が課題でした。近年は耐熱性を高めた合金の開発が進み、適用範囲が広がりつつあります。
用途⑤電装系の放熱・ヒートシンク部品
電子化が進む現代の自動車では、LEDヘッドライトや電装ユニットの放熱部品にもマグネシウムが使われ始めています。熱を逃がしつつ、部品を軽くできる点が評価されています。
EVやハイブリッド車ではモーターやインバーターなど発熱する部品が増え、軽くて放熱性のよい素材の価値が高まっています。私たちも高熱伝導マグネシウムの開発に取り組み、この分野に応えています。
なお、マグネシウムの放熱性を活かすポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:設計を最大化!マグネシウムの放熱性を活かす3つのポイント

マグネシウムを自動車部品に採用する3つのポイント
用途が広いとはいえ、マグネシウムは「採用すれば必ずうまくいく」素材ではありません。特性を理解せずに使うと、割れや腐食といったトラブルにつながります。マグネシウムを自動車部品に採用を成功させるポイントを紹介します。
ポイント①設計段階からマグネシウムの特性を織り込む
マグネシウムは、軽さや放熱性に優れていますが、割れやすさや腐食といった注意点もある素材です。これらの特性を理解しないまま設計を進めると、後工程での手戻りやコスト増を招きやすくなります。
このため、図面を引く前の段階から、肉厚やリブの配置、抜き勾配などを特性に合わせて検討することが大切です。成形のしやすさを意識した形状にしておけば、量産時の不良を抑え、品質とコストの両面で有利になります。
ポイント②耐食性を考慮した表面処理を選ぶ
マグネシウムは腐食しやすい性質があり、無処理のまま使うと白錆が発生する場合があります。自動車部品は雨や湿気にさらされる前提のため、表面処理の選び方が長期の信頼性を左右します。
代表的な処理には、化成処理や塗装、陽極酸化などがあり、設置場所や求める耐久性によって適切な方法が変わります。過剰な処理はコスト増を招くため、使用環境に見合った仕様を見極めることが、品質とコストを両立させる鍵になります。
ポイント③成形工法を用途に合わせて見極める
マグネシウムの代表的な成形工法には、ダイカストとチクソモールディング(半溶融状態で射出成形する工法)があります。求める精度や肉厚、生産量によって、適した工法は変わります。
薄肉で寸法精度が求められる部品なら、表面品質に優れるチクソ成形が向いています。一方、大型部品や量産性を重視する場合はダイカストが有利です。用途ごとに最適な工法を選ぶことで、品質を確保しながらコストも抑えられます。判断に迷う際は専門メーカーへ相談しましょう。
なお、チクソモールディングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:チクソモールディングとは?マグネシウム成形技術のメリット・デメリットをご紹介!

自動車でマグネシウムの用途が広がる背景とメリット・デメリット
なぜいま、自動車でマグネシウムの用途が注目されているのか。背景には、環境規制の強化とEVシフトという大きな流れがあります。
車体が軽くなれば、燃費の向上やCO2排出量の削減につながります。EVでは軽量化が航続距離の延長に直結するため、軽い素材への期待がいっそう高まっています。
マグネシウムを自動車に使うメリット
マグネシウムを自動車に使うメリットとして、以下の表のとおり、マグネシウムは実用金属でもっとも軽く、切削抵抗も小さいため加工時間を短縮できます。切削指数は鉄の約6分の1で、工具寿命の延長にもつながります。
◆主要金属の特性比較表
| 項目 | マグネシウム | アルミニウム | 鉄 |
| 比重(目安) | 約1.8 | 約2.7 | 約7.9 |
| 切削指数 | 1 | 1.8 | 6.3 |
| 振動吸収性 | 高い | 中程度 | 低い |
また、軽さに加え、振動吸収性やリサイクル性にも優れます。再溶解によるリサイクルに必要なエネルギーは新材生産の約4%とされ、環境負荷の低い素材としても評価されています。
マグネシウムを自動車に使うデメリット
マグネシウムは、腐食しやすく、塑性加工が難しいうえ、材料費や製造コストがアルミより高くなりがちな点が代表的な課題です。鋳造品の状態でアルミ合金の最大2倍程度になる場合もあり、量産では費用対効果の見極めが欠かせません。
また、適切な表面処理や工程管理を怠ると、白錆や成形不良につながります。こうした特性を理解したうえで、軽量化の効果が大きい部位に絞って使うことが、現実的な活用法になります。

マグネシウムの自動車部品づくりなら「株式会社藤岡エンジニアリング」

自動車向けマグネシウム部品の軽量化や難形状でお悩みなら、「株式会社藤岡エンジニアリング」にお任せください。創業70年を超える歴史の中で培った技術力で、アルミダイカストやマグネシウムチクソ成形の豊富な実績を積み重ねてきました。
私たちは、最適な素材選定と高度な成形技術の両立を強みとしています。金型の設計から製品の仕上げまで一貫して対応できる体制で、お客様の製品価値を最大化するソリューションを提案します。
軽量化への挑戦や難しい形状の実現でお困りの際は、経験豊富な専門スタッフへお気軽にご相談ください。最適な工法と素材で、高品質なモノづくりをお手伝いします。⇒株式会社藤岡エンジニアリングへのお問い合わせはこちら

マグネシウムの自動車用途でよくある3つの質問
マグネシウムの自動車用途でよくある質問をご紹介します。それぞれ詳しくみていきましょう。
質問①マグネシウムとアルミ、自動車部品にはどちらが向いていますか?
どちらが優れているというより、求める性能や部位によって使い分けるのが現実的です。とにかく軽さや放熱性、振動吸収性を重視するならマグネシウム、コストや汎用性、加工のしやすさを優先するならアルミがおすすめです。
たとえば、軽量化の効果が大きい構造部品にはマグネシウム、量産性が問われる部品にはアルミという選び方も有効です。1つの素材にこだわらず、車両全体で最適化を考えることが、コストと性能の両立につながります。
質問②EVでマグネシウムの採用は今後増えますか?
EVでマグネシウムの採用は、増える可能性は高いです。EVは車体が重くなりがちで、軽量化が航続距離の延長に直結するため、実用金属で最も軽いマグネシウムへの期待が高まっています。
モーターやインバーターなど発熱する部品が増えるEVでは、軽くて放熱性に優れる特性が活きます。耐熱性や耐食性を高めた合金の開発も進み、適用範囲は広がりつつあります。コストや量産性の課題を踏まえつつ、効果の大きい部位から採用が進むといわれています。
質問③マグネシウム部品の品質はどのように保証されますか?
一般的には、各工程での検査と品質管理体制によって保証されます。三次元測定機などによる寸法検査、外観チェック、強度や耐食性の試験を組み合わせ、図面で求められる精度や性能を満たしているかを確認します。
また、ISO9001などの品質マネジメント規格を取得しているメーカーであれば、検査記録やトレーサビリティが整い、量産でも品質のばらつきを抑えられます。依頼前に検査体制や保証範囲を確認しておくと安心です。

用途を見極めてマグネシウムで自動車を軽量化しよう!
マグネシウムは、用途を見極めて使えば自動車の軽量化を大きく前進させる素材です。ステアリングの芯金やシートフレーム、放熱部品など、適所での採用が着実に広がっています。採用を成功させるには、以下のポイントを押さえることが近道になります。
- ポイント①設計段階からマグネシウムの特性を織り込む
- ポイント②耐食性を考慮した表面処理を選ぶ
- ポイント③成形工法を用途に合わせて見極める
また、軽量化の効果は車両全体で考えると見えやすくなります。1部品あたりは数百グラムでも、複数部品の積み重ねが燃費や航続距離の差を生みます。自社部品の中で「重さがネックになっている部位」から検討を始めると、投資対効果を判断しやすくなります。
なお、「藤岡エンジニアリング」では、軽くて丈夫なマグネシウムやアルミの精密部品製造から金型設計・製作まで一貫して対応し、お客様のニーズに最適なソリューションを提供しています。高品質な製品をお求めの場合は、ぜひ一度ご相談ください。⇒藤岡エンジニアリングへのお問い合わせはこちら



コメント