マグネシウムのリサイクルは、品質を落とさずにCO2を大幅に削減できるため、これからのものづくりに欠かせない選択肢です。再生材で本当に品質を保てるのか、コストは見合うのか不安を感じている方もおられるのではないでしょうか。
結論から言えば、原料をていねいに整え、用途に合った素材を選び、地域で循環させれば、バージン材に劣らない品質のまま環境負荷もコストも抑えられます。当社が成形を担う岡山発の取り組みは、強度低下ゼロでCO2を約9割減らしました。成功のカギは、以下のポイントに集約されます。
- ポイント①不純物と樹脂を確実に取り除く
- ポイント②用途に合った合金グレードを選定する
- ポイント③地域内で循環させ輸送負荷を抑える
この記事では、廃車のマグネシウムをリサイクルし釣り具に再生した事例、製品に活かす具体的なポイント、リサイクルが注目される背景までを順に解説します。また、よくある質問も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。


廃車のマグネシウムをリサイクルし釣り具に再生した事例

当社が参画する「岡山発 グリーンマグネシウムプロジェクト」は、役目を終えた自動車のハンドルから取り出したマグネシウムを、釣り用リールの部品へ生まれ変わらせる取り組みです。この挑戦は2026年5月に山陽新聞の朝刊でも取り上げられました。
マグネシウムは実用金属で最も軽く、比強度や比剛性に優れた構造用金属です(JOGMEC 鉱物資源マテリアルフロー)。自動車ではハンドルの骨格に使われていますが、樹脂との分離が難しく、これまで再生利用はほとんど進んできませんでした。
そこで岡山県内の4社が役割を分担して、地域内で資源を循環させる仕組みを築きました。当社はリサイクルマグネシウムをリール部品へ成形・加工する工程を担っています。
◆グリーンマグネシウムプロジェクトの工程

この一連の流れによって、輸入に頼っていた原料を国内で循環させ、軽くて丈夫なリールを全世界のアングラー(釣り人)へ届ける道筋が見えてきました。試作段階ではメーカーの品質基準を満たしており、再生利用品としての製品化が現実味を帯びています。

リサイクルマグネシウムを製品に活かす3つのポイント
リサイクルマグネシウムを実際の製品へ落とし込むには、いくつかの勘どころがあります。私たちが現場で大切にしている3つのポイントを紹介します。
◆リサイクルマグネシウムを製品に活かす3つのポイントの概要図

それぞれについて詳しくみていきましょう。
ポイント①不純物と樹脂を確実に取り除く
リサイクルマグネシウムの品質は、原料からどれだけ不純物を取り除けるかで決まります。とくに自動車のハンドルは、マグネシウムにウレタン樹脂が一体化しており、そのまま溶かすと再生材の純度が大きく下がってしまいます。
そこで、粉砕した素材から樹脂を分離し、鉄やアルミといった異種金属を選別する工程が欠かせません。回収段階で異物を確実に除去しておくことが、後の精錬や成形での品質トラブルを防ぎ、安定した強度を引き出す土台になります。
ポイント②用途に合った合金グレードを選定する
マグネシウムと一口に言っても、合金の種類によって強度や耐食性、加工のしやすさは大きく変わります。求められる性能を見極めずに素材を選ぶと、リサイクル材であるかよりも、製品としての品質が安定しません。
たとえば、軽さと強度が問われるリール部品なら、その用途に適した合金グレードを見極めなければなりません。回収した素材の成分を把握したうえで、最終製品が求める基準から逆算して合金を選定することが、再生材を活かす近道になります。
なお、マグネシウムとアルミの強度を最適化するコツについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:軽量化の鍵!マグネシウムとアルミの強度を最適化する3つのコツ
ポイント③地域内で循環させ輸送負荷を抑える
リサイクルの環境価値を最大化する鍵は、原料をどこで回収して、どこで加工するかにあります。再生材を使っても、長距離を運んでいてはCO2の削減効果が薄れ、輸送コストもかさんでしまいます。
このため、回収から精錬、成形、完成までを近い地域で完結させると、移動の距離が大きく縮まります。輸送に伴うCO2と費用の両方を抑えられるため、リサイクル材の環境価値とコスト競争力をともに引き出せます。地域内での循環は、安定した供給にもつながります。

マグネシウムのリサイクルが注目される3つの背景
マグネシウムのリサイクルへの関心が、ここ数年で急速に高まっています。その背景には、供給・価格・環境という構造的な事情があります。
◆マグネシウムのリサイクルが注目される3つの背景の概要図

それぞれについて詳しくみていきましょう。
背景①特定国への供給依存というリスク
日本はマグネシウムの原料のほとんどを中国からの輸入に頼っており、経済産業省も特定国への依存をリスクとして問題視しています。輸入先が偏っていると、相手国の事情ひとつで供給が止まりかねません。
国内で資源を循環させるリサイクルは、こうした供給リスクを和らげる現実的な手立てとして注目されています。
なお、BCP対策に必要な5つの視点とステップについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:【初心者向け】BCP対策に必要な5つの視点と3つのステップ
背景②価格高騰による調達コストの不安定さ
2021年には中国の電力不足を機に価格が急騰したため、年初の水準から数倍に跳ね上がりました。原料価格が読めない状態では、安定したものづくりが難しくなります。
国内で回収した再生材を活用できれば、海外相場の急変動に振り回されにくくなります。価格面の安心感も、リサイクルが求められる大きな理由です。
参考:マグネシウム価格高騰に関する状況について|日本マグネシウム協会
背景③脱炭素に向けた環境負荷の低減要請
マグネシウムは鉱石からの製錬や長距離輸送の過程で、大量のCO2を排出します。脱炭素が世界共通の課題となるなか、この環境負荷を見過ごせなくなってきました。
リサイクル材の利用は、製錬にかかるエネルギーを大きく減らせます。地域内で循環させて輸送距離まで縮めれば、環境価値はより高まります。

マグネシウムのリサイクルなら「株式会社藤岡エンジニアリング」

「株式会社藤岡エンジニアリング」は、アルミやマグネシウムの精密部品製造において、最適な素材選定と高度な成形技術を両立しています。創業70年を超える歴史で培った技術力を土台に、アルミダイカストやマグネシウムチクソ成形(合金を半溶融状態で成形する方法)で実績を重ねてきました。金型の設計から製品の仕上げまで一貫して対応できる体制が、当社の強みです。
今回のグリーンマグネシウムプロジェクトでも、リサイクル材を高品質なリール部品へと成形する役割を担っています。軽量化への挑戦や難形状の実現でお困りなら、ぜひ当社にご相談ください。リサイクル材を含めた最適な素材選定と確かな成形技術で、お客様の製品価値を最大化するご提案をします。⇒藤岡エンジニアリングへのお問い合わせはこちら

マグネシウムのリサイクルでよくある3つの質問
マグネシウムのリサイクルでよくある質問をご紹介します。それぞれ詳しくみていきましょう。
質問①リサイクルしたマグネシウムは強度が落ちませんか?
リサイクル材だから強度が劣るとは限りません。品質を左右するのは「再生か」ではなく、原料からどれだけ不純物を取り除き、用途に合った合金を選べているかです。
回収段階で樹脂や異種金属を確実に除去して、適切な精錬と成形を行えば、新たに製造したバージン材と同等の強度を保てます。実際に、強度低下ゼロを確認できた事例もあります。素材の状態を見極めて条件を整えることが、品質を守る要点です。
なお、マグネシウムとアルミの強度を最適化するコツについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:軽量化の鍵!マグネシウムとアルミの強度を最適化する3つのコツ
質問②なぜマグネシウムのリサイクルはこれまで進まなかったのですか?
最大の理由は、製品から純度の高いマグネシウムを取り出すことが難しかったためです。たとえば、自動車のハンドルでは、マグネシウムがウレタン樹脂と一体化しており、きれいに分離する手間がかかります。
さらに、回収したマグネシウムを使う出口となる用途も限られていました。手間に見合う再生先が乏しければ、リサイクルは広がりません。分離技術の進歩と明確な用途の確保によって、この状況は少しずつ変わり始めています。
質問③リサイクル材を使うとコストは高くなりませんか?
リサイクル材は割高になりがちですが、仕組み次第でコストは抑えられます。割高になる主な要因は、分離や精錬の手間に加えて、原料を遠くまで運ぶ輸送費にあります。
回収から精錬、成形までを近い地域で完結させれば、輸送費を大きく削減できます。さらに、軽さや強度が価値を生む高付加価値な製品に使うと、素材コストの差を吸収しやすくなります。使い方を工夫すれば、十分に見合う選択肢になります。

マグネシウムのリサイクルで、軽さと環境性能を両立させよう!
マグネシウムのリサイクルは、「品質が落ちる」「割高になる」とあきらめる時代ではありません。回収から成形までを地域でつなぎ、技術で品質を担保すれば、軽さも環境性能も両立できます。
以下のポイントを押さえれば、マグネシウムの再生材を活かす第一歩になります。
- ポイント①不純物と樹脂を確実に取り除く
- ポイント②用途に合った合金グレードを選定する
- ポイント③地域内で循環させ輸送負荷を抑える
構造材向けのマグネシウム合金の国内需要は底堅く推移しています。需要が見込まれるいまこそ、再生材の活用を考える好機です。供給に不安を抱えているなら、まずは自社の部品に再生材を使える余地があるか見極めるところから始めてみてください。
なお、「藤岡エンジニアリング」では、軽くて丈夫なマグネシウムやアルミの精密部品製造から金型設計・製作まで一貫して対応し、お客様のニーズに最適なソリューションを提供しています。また、高品質な製品をお求めの場合は、ぜひ一度ご相談ください。⇒藤岡エンジニアリングへのお問い合わせはこちら



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