放熱性とは、熱を逃がしやすいマグネシウム合金の特性を活用し、製品内部の温度上昇を抑える仕組みです。「マグネシウムの放熱性について調べているけれど、アルミニウムと比較して本当に効率的なのか不安だ」と悩んでいるエンジニアの方は多いのではないでしょうか。
単に素材を置き換えるだけでは不十分であり、工法と設計を最適化してこそマグネシウムの真価が発揮されます。設計を成功させるためには、以下のポイントが大切です。
- ポイント①適切な表面処理の選定
- ポイント②チクソ成形による薄肉化の実現
- ポイント③接触熱抵抗を低減する界面設計
この記事では、マグネシウムの放熱性能を最大限に引き出すポイント、アルミニウムとの性能比較について解説します。また、よくある質問も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。


マグネシウムとアルミニウムの放熱特性と重量の比較
アルミニウム(ADC12)と比較すると、マグネシウム(AZ91D)の熱伝導率は数値上は低くなります。しかし、密度が約33%も低いため、同じ重量であればマグネシウムの方がより肉厚に、あるいは表面積を大きく設計が可能です。
放熱量は表面積に比例するため、この「軽さ」を活かした形状設計こそが熱対策の鍵となります。さらに、熱放射率がアルミニウムより高いため、筐体全体から熱を逃がす能力は決して引けを取りません。
熱伝導率の数字だけに囚われず、重量削減と放熱効率のバランスを最適化しましょう。以下の表に、一般的なダイカスト用合金の特性比較をまとめました。
◆主要素材の比較表
| 特性項目 | マグネシウム(AZ91D) | アルミニウム(ADC12) |
| 密度(g/cm3) | 1.81 | 2.68 |
| 熱伝導率(W/m・K) | 51-72 | 92-96 |
| 比強度 | 134 | 88 |
素材の特性を理解した上で、チクソ成形による薄肉化や複雑なフィン形状を組み合わせることが大切です。これにより、アルミニウムでは到達できない「超軽量かつ高放熱」なデバイスの実現ができます。
なお、アルミとマグネシウムの比重の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:アルミとマグネシウムの比重の違い!軽量化を実現するポイント

マグネシウムの放熱性能を最大限に引き出す3つのポイント
マグネシウム合金が持つ優れた放熱特性を製品設計に活かすには、素材の性質を深く理解したアプローチが欠かせません。単に形状を作るだけでなく、表面の状態や成形手法まで踏み込むことで、熱マネジメントの質は劇的に向上します。
◆マグネシウムの放熱性能を引き出す3つのポイント

それぞれについて詳しくみていきましょう。
ポイント①適切な表面処理の選定
マグネシウムは非常に活性な金属であり、酸化を防ぐための表面処理は製品寿命を左右します。しかし、一般的な防錆塗装で被膜を厚くしすぎると、素材本来の優れた放熱性を阻害しかねません。
熱対策を重視する設計では、熱伝導を妨げない薄膜処理との両立を意識する必要があります。具体的には、薄い膜を形成する化成処理や、放射率を向上させる陽極酸化処理(電気化学的に酸化被膜を作る手法)が有効です。使用環境に適した熱抵抗の低い被膜を選択すれば、熱を効率よく外部へ逃がす構造を実現できます。
ポイント②チクソ成形による薄肉化の実現
マグネシウムの最大の武器は、チクソ成形によってアルミニウムでは困難な1.0mm以下の薄肉形状を精密に再現できる点です。この薄肉化は単なる軽量化に留まらず、内部容積を広げて空気の流れを最適化する効果をもたらします。
熱源からの距離を短縮して、熱を素早く外部へ逃がす構造を作る上でも、極めて有効なアプローチとなります。複雑な放熱フィンを筐体と一体成形すれば、部品点数の削減と熱伝導経路の短縮を同時に実現できます。
なお、チクソモールディングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:チクソモールディングとは?マグネシウム成形技術のメリット・デメリットをご紹介!
ポイント③接触熱抵抗を低減する界面設計
どれほど素材の放熱性が優れていても、発熱体とマグネシウム部品の間に僅かな隙間があれば、熱はスムーズに伝わりません。空気は断熱材に近い性質を持っており、界面の密着度が低いと熱が滞留する原因となります。
このため、接触熱抵抗を最小化することが、設計の成否を分ける重要事項だと捉えています。部品の平滑度を極限まで高め、熱伝導シートやグリスなどの材料を最適に配置する設計を徹底しましょう。
ミクロン単位で接合面を管理すれば、界面での熱損失を劇的に低減できます。発熱体の熱をダイレクトに筐体へ逃がして、製品の安定動作と長寿命化を同時に実現しましょう。

マグネシウム熱伝導率を活かした設計なら「株式会社藤岡エンジニアリング」

「株式会社藤岡エンジニアリング」は、アルミやマグネシウムの精密部品製造において、最適な素材選定と高度な成形技術の両立が可能です。同社は、創業70年を超える歴史の中で培った確かな技術力を持っており、アルミダイカストやマグネシウムチクソ成形における豊富な実績を誇っています。
また、金型の設計から製品の仕上げまで一貫して対応できる体制が強みです。軽量化への挑戦や難形状の実現でお困りの際は、お気軽にご相談ください。高品質なモノづくりを通じて、お客様の製品価値を最大化するソリューションを提案します。⇒株式会社藤岡エンジニアリングへのお問い合わせはこちら

マグネシウムの放熱性でよくある3つの質問
マグネシウムの放熱性でよくある質問をご紹介します。それぞれ詳しくみていきましょう。
質問①アルミニウム用の金型をそのまま流用してマグネシウムを成形できますか?
マグネシウムとアルミニウムでは凝固時の収縮率や溶融金属の流動特性が大きく異なるため、設計の根幹から見直す必要があります。無理に流用すると寸法精度の狂いを招いたり、成形不良を引き起こしたりするリスクがあります。
製品の品質を安定させるためにも、各素材の物理特性に合わせた専用設計を施すことが製品価値を高める近道です。
質問②マグネシウムは燃えやすいと聞きますが、放熱部品として使用しても安全ですか?
AZ91Dなどの実用マグネシウム合金は、製品としての通常使用温度域で発火することはありません。固体の状態であれば極めて安定しており、PCやスマートフォンの筐体、車載部品として安心して採用できます。
多くの方が抱く不安は理科の実験などで見る粉末状態の特性に由来しますが、製品のような塊(バルク)の状態では極めて安定した物質です。安全性を理由に採用をためらう必要はないため、安心して設計に取り入れてください。
なお、マグネシウムの危険性については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:マグネシウムの危険性とは?安全に製造する3つのポイント
質問③コストはアルミニウムと比較してどの程度高くなりますか?
マグネシウムは素材単価こそアルミニウムより高い傾向にありますが、製品全体のトータルコストで評価することが大切です。チクソ成形による薄肉化で材料使用量を抑えたり、複雑な形状を一体成形して組立工程を削減したりすれば、最終的な価格差は大幅に縮小します。
さらに、製品が軽量化されると、輸送コストの低減や最終製品の付加価値向上といったメリットも生まれます。初期の単価だけに注目するのではなく、製造から運用まで含めた全体最適の視点で検討を進めましょう。

マグネシウムの放熱性を活かして理想の製品を作ろう!
マグネシウムの放熱性を最大限に活用すれば、製品の軽量化と熱対策を高い次元で両立させられます。数値上の熱伝導率だけに囚われず、形状や表面処理を工夫してトータルでの放熱効率を追求しましょう。具体的な設計のポイントは、以下のとおりです。
- ポイント①適切な表面処理の選定
- ポイント②チクソ成形による薄肉化の実現
- ポイント③接触熱抵抗を低減する界面設計
一歩進んだ設計を実現するには、素材の特性を熟知したパートナーとの連携が成功の鍵を握ります。設計の初期段階で放熱シミュレーションを行い、マグネシウムの熱放射率の高さを考慮に入れることで、より精度の高い熱マネジメントが可能となります。
「藤岡エンジニアリング」では、高い技術力が求められるダイカスト金型の製作において、70年超の歴史と先進的なチクソ成形技術を融合させ、軽量・高精度な部品を一貫体制で提供しています。お客様の要求を満たす最適なダイカスト金型や精密部品の製造について、ぜひ藤岡エンジニアリングにご相談ください。⇒藤岡エンジニアリングへのお問い合わせはこちら



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