切削加工の加工精度とは、製品が設計図面の寸法や形状といかに一致しているかを表す度合いです。多くの技術者が、切削加工の加工精度の維持や向上に課題を抱えています。
しかし、誤差が発生する原因を正しく理解して、適切な対策を講じればミクロン単位の制御は可能です。切削加工の加工精度を左右する主な要因としては、以下があげられます。
- 要因①熱変位による誤差
- 要因②工具のたわみと摩耗
- 要因③機械自体の精度不足
この記事では、切削加工の精度を構成する要素や、向上させるポイント、左右する主な要因を網羅的に解説します。また、よくある質問も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。


切削加工の精度を構成する3つの要素
切削加工において「精度がよい」とは、単に寸法が合っているだけではありません。求められる加工精度は、以下の要素が高いレベルで満たされている状態を指します。それぞれ詳しくみていきましょう。
要素①寸法公差(サイズ精度の追求)
寸法公差とは、指定された寸法に対して許容される誤差の範囲です。一般的な切削加工では、±0.05mm(50ミクロン)程度の精度が求められますが、精密部品では±0.005mm以下の精度が必要になるケースも珍しくありません。
穴径や軸径など、部品同士が嵌合(かんごう)する部分においては、この寸法公差を厳守しなければ製品として機能しません。
要素②幾何公差(形状精度の追求)
幾何公差とは、サイズ(寸法)の管理だけでは制御できない、「形状」や「位置関係」の正確さを規定する指標です。指定寸法通りに加工できていても、平面が反っていたり穴が傾いていたりすれば、部品同士が正しく組み合わないため、隙間による液漏れや振動といった不具合の原因になります。
真円度や直角度など、公差領域は多岐にわたりますが、気密性や回転精度が求められる精密部品においては、製品の寿命と品質を左右する決定的な要素となります。
要素③表面粗さ(仕上げ精度の追求)
表面粗さとは、加工面に生じる微細な凹凸の度合いを示す指標であり、製品の寿命や性能を決定づける要素です。単に見た目を整えるだけでなく、部品同士が触れ合う摺動(しゅうどう)部の摩擦抵抗や、気密性を保つシール部品の機能に直接的な影響を与えます。
高精度な切削加工では、Ra(算術平均粗さ)やRz(最大高さ粗さ)をミクロン単位で厳格に管理します。これにより、限りなく鏡面に近い滑らかな仕上げを実現することが可能です。
しかし、すべての加工において鏡面仕上げが最適であるとは限りません。鏡面にするには専用の刃物や工具が必要になるため、加工品の用途や材質に合わせて最適な道具を選定する必要があります。

切削加工の加工精度を向上させる5つのポイント
加工精度を安定して出すためには、機械任せにするのではなく、環境や運用面での工夫が不可欠です。ここでは、精度向上に直結する具体的なポイントを紹介します。
ポイント①温度管理を徹底して熱変位を防ぐ
金属は温度変化によって伸縮する性質があるため、熱は加工精度の最大の敵といっても過言ではありません。工場内の室温がわずかに変化するだけでも、機械本体やワークが膨張・収縮して、数ミクロンの致命的な誤差が生じてしまいます。
このため、高精度な加工には熱変位補正装置などを活用して、環境変化による影響を最小限に抑えることが不可欠です。さらに、始業前の暖気運転やクーラント液の温度管理を徹底して、加工環境の温度を一定に保ち続けることが、熱変位を防ぎ寸法を安定させるための大切なポイントとなります。
ポイント②剛性の高い工作機械を選定する
高精度な加工を実現するには、振動に強く変形しにくい「高剛性」な工作機械の選定が欠かせません。機械の剛性が不足していると、加工時の切削抵抗に耐えきれずに「ビビリ振動」が発生して、加工面の悪化や寸法精度の低下を招く原因となります。
硬い素材や大きな部品を削る際は、機械そのものの強度が品質に直結するため、ワークの特性に見合った十分な能力を持つ機械を選ぶ必要があります。
ポイント③工具の摩耗管理と適切な選定を行う
削工具は使用に伴い必ず摩耗して、微細な刃先の減りが寸法誤差の直接的な原因となります。高精度を維持するためには、加工された製品の表面状態や寸法といった出来栄えを確認してください。その変化に合わせた工具の交換が、品質を安定させるポイントになります。
また、被削材の特性に合致した材質やコーティングを持つ工具の選定も大切です。適切な工具選びは摩耗を遅らせ、長期間にわたり安定した加工精度を保つための土台となります。製品の仕上がりを基準とした明確な交換ルールを定め、常にベストな状態で加工を行いましょう。
ポイント④ワークの固定方法を最適化する
ワーク(加工物)の固定は、強すぎれば歪みを生み、弱すぎればズレや振動を招くため、バランス調整は大切です。薄肉部品などは、クランプの圧力だけで容易に変形してしまうため、締め付け力を微調整できる治具や、面で保持する真空チャックなどの活用が有効です。
また、加工中だけでなく、固定を解除した後の形状変化までを予測して、歪みを極限まで抑える最適な固定方法を選択することが、高精度な仕上がりを実現する鍵となります。
ポイント⑤加工パスと切削条件を見直す
仕上げ加工の精度を高めるには、最終的な削り代(取り代)を均一に整えるような加工パスの設計が不可欠です。取り代が不均一だと切削抵抗が変動して、寸法が安定しない原因になるため、荒加工の段階から仕上げを意識したパスを組まなければなりません。
また、回転数や送り速度などの切削条件を最適化して、加工熱の発生や振動を最小限に抑えることも大切です。負荷変動をなくして、常に一定の条件で削ることが、ミクロン単位の精度確保につながります。

切削加工の加工精度を左右する主な要因
なぜ加工精度が悪くなるのか、原因を特定するのは改善への近道です。ここでは、一般的に加工精度に影響を与える主な要因について解説します。
要因①熱変位による誤差
熱変位は、加工精度の低下を招く一番の要因といわれています。切削時の摩擦熱だけでなく、モーターの自己発熱や外気温の変化により、機械の構造体やワーク自体が膨張・収縮して、刃先位置に微妙なズレが生じるためです。
この熱による変位は、時に数十ミクロンにもおよぶ大きな誤差となります。ミクロン単位の精度が求められる精密加工において、熱の影響をいかに排除するかが、品質を左右する大きな分かれ道となります。
要因②工具のたわみと摩耗
切削加工中、工具には強い抵抗がかかるため、わずかな「たわみ(逃げ)」が発生します。これにより、狙った位置まで刃が届かず、想定よりも削り残しが生じて寸法誤差の原因となります。
突き出し量が長い工具や小径のエンドミルでは、この現象が顕著に現れます。さらに、使用に伴う「摩耗」で刃先位置が変化するケースも避けられません。このように物理的な変形と消耗の双方が、精密な寸法管理を阻害する大きな要因となります。
要因③機械自体の精度不足
工作機械そのものが持つ基本性能や、長年の使用による経年劣化も、加工精度を決定づける根本的な要因です。たとえば、駆動部品であるボールねじのバックラッシ(隙間)やガイドレールの摩耗が発生すると、機械の動きに微細なガタツキが生じて、正確な位置決めが不可能になります。
どのように優れたプログラムを作成しても、土台となる機械の精度が不足していては高精度な加工は望めません。このため、定期的な精度測定とメンテナンスによる状態維持が不可欠です。

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参考:藤岡エンジニアリング
「藤岡エンジニアリング」は、軽くて丈夫なマグネシウムやアルミの精密部品製造と、高品質な射出成形用金型製造で日本のモノづくりを支えている企業です。創業から70年以上にわたり培ってきた技術と、環境に配慮したマグネシウムチクソ成形のような先進技術を融合しています。
さらに、精密三次元測定機4台、表面粗さ計、デジタル顕微鏡など豊富な測定機を保有しており、
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切削加工の加工精度でよくある3つの質問
ここでは、切削加工の加工精度でよくある質問をご紹介します。それぞれ詳しくみていきましょう。
質問①加工精度とコストの関係はどうなっていますか?
一般的に、求められる加工精度が高くなればなるほど、製造コストも比例して上昇します。高精度を実現するためには、慎重な切削による加工時間の延長や、高価な精密工具の使用、恒温管理、検査体制の強化など、多くのリソースが必要となるためです。
このため、製品全体に過剰な精度を求めるのではなく、大切な箇所にのみ厳しい公差を設定するなど、設計段階でのメリハリを持たせる方法がコストダウンの鍵となります。
質問②一般的な切削加工の寸法公差はどれくらいですか?
図面上で特別な数値の指定がない場合(一般公差)は、JIS規格(JIS B 0405)の中級などが適用される場合が多く、概ね±0.1mm〜±0.3mm程度が目安です。
一方で、ベアリングの挿入部など高い精度が必要な箇所には個別に公差が指定され、±0.01mmやそれ以下(ミクロン単位)の厳しい管理が求められます。このように、重要度に応じて公差の厳しさは使い分けられています。
質問③加工精度を測定するにはどのような機器が必要ですか?
基本的な測定にはノギスやマイクロメータを使用しますが、より高度な精度保証には三次元測定機や画像測定機が不可欠です。これらは、複雑な立体形状や幾何公差を正確に数値化できます。
また、表面粗さや輪郭形状を測る専用機器も品質管理が欠かせません。近年では機内計測も普及していますが、金型のような剛性の高いものと異なり、Mg合金やAl合金は注意を要します。これらの素材は加工による歪みが出やすいため、機内測定ではなく定盤(じょうばん)上で安定させてから計測を行う手法を選んでください。

要因を理解して高精度な切削加工を実現しよう!
切削加工の加工精度を向上させるためには、誤差の要因を正しく理解して、1つひとつ対策を積み重ねるのが大切です。機械の性能だけでなく、温度管理や工具選定、段取りの工夫など、人の手による管理が最終的な品質を決定づけます。切削加工の加工精度を劇的に向上させるポイントは、以下があげられます。
- ポイント①温度管理を徹底して熱変位を防ぐ
- ポイント②剛性の高い工作機械を選定する
- ポイント③工具の摩耗管理と適切な選定を行う
- ポイント④ワークの固定方法を最適化する
- ポイント⑤加工パスと切削条件を見直す
高い加工精度を実現できれば、製品の信頼性を高め、企業の競争力強化につながります。まずは、現状の課題を分析して、できるところから改善をはじめてみましょう。
また、どれだけ社内努力をしても限界がある場合や、より高精度・難形状の加工が求められる場合は、高い技術力を持つ専門企業をパートナーに選ぶ方法も大切です。外部の知見を取り入れると、自社の課題解決が加速して、より高品質なモノづくりが可能になります。
「藤岡エンジニアリング」は、軽くて丈夫なマグネシウムやアルミの精密部品製造と、高品質な射出成形用金型製造で日本のモノづくりを支えている企業です。創業から70年以上にわたり培ってきた技術と、環境に配慮したマグネシウムチクソ成形のような先進技術を融合して、顧客の期待を超える製品を提供し続けています。
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